情報公開システムが必要である

戦争史料の見方、扱い方
      図書館雑誌」1999年8月
                    林 博史
 
 
林 博史教授が1999年8月に書いているが、都合が悪いので防衛図書館には所蔵されていても公開されていない資料がある。
 
 


 
隠されている史料
 
 旧陸海軍史料の多くは、防衛研究所に所蔵されて公開されている。しかし問題が多い。防衛研究所には「戦史史料の一般公開に関する内規」(198212月)というものがある。この内規は非公開になっているが、漏れ伝わっているところによると、「プライバシーの保護を要するもの」「国益を損なうもの」「好ましくない社会的反響を惹起するおそれのあるもの」「その他公開が不適切なもの」と「判定した場合は公開しない」と決められている。「国益を損なうもの」には、「外国人(捕虜の虐待)」「領土問題」「略奪及び虐殺等」「有毒ガスの使用」などが、「好ましくない………」には「細菌兵器の実験についての報告・記録」「細菌兵器使用の疑いを抱かせるもの」などが例示されている(秦郁彦『現代史の争点』)。
 
 要するに、日本軍が毒ガスや細菌兵器を使ったり、捕虜を虐待したり、占領地の住民を虐殺したという史料は公開しないということが防衛庁内部で勝手に決められているである。先ほど、アメリカが没収した史料が返還されたと書いたが、これらの史料を扱っていたアメリカの関係者は731部隊関係の史料があったと話しているが、日本に返還されてからは誰も見ていない。隠されているとしか考えられないが、史料リストがないために何を隠しているのかもよく分らない現状である。今年の2月、国会での追及によって防衛庁は、旧軍関係史料約116000件のうち約7000件を非公開にしていることを明らかにした。
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つまり、「スパイ防止法」なんかを作る前に勝手に機密漏洩をしないシステムができているのである。
そしてそれは結局のところ、防衛上の機密というよりも、真実が知られたくないような犯罪を立証してしまうからだ・・・というのである。
 
諸外国では、ある一定期間が過ぎると、情報公開が義務つけられている。
日本にはそういう法律が存在せず、戦後70年になろうというのに、未だに戦前の史料が公開されていなかったりする。都合の悪いものは闇から闇へと葬り去ろうと言う事らしい。
結局はよくある保身のための情報隠蔽であると言えるだろう。
 
ゆえに、一日も早く情報公開するシステムの確立が求められる。英国のように50年後には、全て公開するようにするのが望ましい。このようにして始めて”公権力”を監視できるのである。