遊郭業者が言う事にゃ「公娼は我が国体に立脚して、神の御威光の下に定められたる制度である」

 
 
1935年2月の出来事ー遊郭業者結託の図
 


 
内務省は国レベルでの公娼廃止を考慮していたというが、政治家を押し立てた業者の圧力に屈してしまう。
彼らは全国貸座敷業者1万1千人に激を飛ばして、35年2月東京で大会を開き、「我らの死活問題たるに留まらず、実に国家隆替の分かれるところあり」
内務省がかようなる国法無視の挙に出ようとするが如きは、言語道断ではないか。公娼は我が国体に立脚して、神の御威光の下に定められたる制度である。」と息巻いた業者達は明治神宮に詣で、宮城を遥拝して天皇陛下万歳を三唱した。
 
(『慰安婦と戦場の性』P39)
 


 
神社と遊郭は相性がいい。
 
昔の大きな遊郭は皆門前町にあった。あるいは吉原のように楼内に神社を備えていた。
 
日本では古来から神社のお祭りというと「乱交パーティ」やら「夜這い」が盛んになされていたからである。
お祭りの夜はあちこちで男女の交わりがあったわけだ。
宇治の乱交祭りは昔から有名だった。
しかしそれは神事だったのである。
 
まるで悪魔崇拝サバトだが。
 
もっと昔は、神社のお祭りに遊女が主役として舞を踊っていた。白拍子とか、その辺りだ。
 
さらに天皇の4人の乳母は、神殿娼婦の名残とも言う。
 
こうして日本の売春は神々の祭りの中で発達して来たのだ。
 
 
 
「(公娼制度廃止は)国法無視の挙」
「公娼は我が国体に立脚して、神の御威光の下に定められたる制度である」
 
と叫んだ遊郭業者は珍しく正解を叫んでいたのである。
 
 
 
 
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性・聖・賎の歴史的探求
ジャンル歴史
体裁四六判 上製 402頁
刊行年月2012-01
内容「遊女=アソビメ」は豊穰儀礼における巫女であり、神の一夜妻を意味していた。この「アソビメ」と天皇との関係を、民俗事例と対比しつつ検討し、日本人の性観念の根源に迫る。

性行為が本来は「神あそび」であり、遊男(あそびを)の代表者が天皇であったことは、本文で詳述したが、遊男としての天皇と「神あそび」をするのが、「上臈女房(じょうろうにょうぼう)」であった。〔…〕したがって、上臈は天皇に仕える(同衾も含む)高級女官をいうが、遊女も上臈と呼ばれている。天皇と上臈は、遊男・遊女、大神(だいじん)・花魁(おいらん)と重なり、さらに神と神妻の関係でもある。──「あとがき」より

性・聖・賤の歴史的探究
 トロイ発掘で名高いシュリーマンは、幕末に来日して浅草寺に詣でたおり、仏像のかたわらに掛けられた遊女の画像に瞠目し、「それは私には前代未聞の途方もない逆説のように思われた──長い間、娼婦を神格化した絵の前に呆然と立ちすくんだ」と記している。
 遊女の古語は「アソビメ」で、豊穰儀礼としての神アソビにおける一夜妻(巫女)を意味していた。非日常のハレの日の性行為はすべて神アソビであり、アソビメに対するアソビヲの代表者は現人神としての天皇であった。また、近世の遊廓では客を大神(大尽)、客の連れを末社、遊女を上臈もしくは大夫と呼び、贅を尽くした饗宴をつきものとした。客は客人神、遊女は巫女ないし女神という設定である。それは天皇と遊女の関係に象徴される古代神事の名残であった。
 古代における神アソビの形式が近世遊廓にまで伝えられ、その「聖」と「賎」の混交がシュリーマンには「途方もない逆説」と見えたのである。
 「遊女=アソビメ」と天皇の歴史的関係を、民俗事例と対比しつつ詳細に検討し、日本人の性観念の根源に迫る。

 [目次]
 第一章 神遊びとしての性行為
  遊女と神遊び
  「歌垣」という「あそび」
  古い歌垣の「あそび」を伝える民俗例
  神遊びとしての「股くはし」
  神遊びとしての性行為の例
  沖縄の「神遊祭」をめぐって
  「雑魚寝」といわれる「あそび」
  遊女としてのアメノウズメと「姫遊び」
 第二章 天皇の「あそび」と遊女
  天皇の「あそび」と神婚
  天皇の「とよのあそび」の神婚
  神妻と遊女
  性的オルギーについて
  天皇出雲国造采女
  江戸時代の遊廓と「貸妻」の習俗
  旅人を歓迎する性習俗と客人神
  客人神としての天皇采女
 第三章 一夜妻と人身御供
  『万葉集』の一夜妻
  一夜妻が酒をすすめる意味
  一夜妻と「一時上臈」
  人身御供と一夜妻
  「刀自覓め」と一夜妻・人身御供
  いわゆる「掠奪婚」の民俗例
  一夜妻と「神隠し」
  一夜妻・斎王・人身御供
  人身御供と神妻
  人身御供と死と再生
 第四章 「初夜権」と成人式と遊女
  「初夜権」と遊女の「みずあげ」
  村の娘を自由にする習俗と「初夜権
  「若者連中規約」と「初夜権
  女になる年齢と成女式の性儀礼
  成年式と遊女
  男への「初夜権」行使
  天皇の成年式(元服)と「添臥」
  「初夜権」とエビス神・若者頭
  若者宿・娘宿・「初夜権
  「柿の木問答」と「初夜権
  「初夜権」と遊女
 第五章 神聖娼婦と日女
  神殿淫売と一夜妻
  神聖娼婦と豊穣儀礼
  インドの「神のはしため」の遊女
  神殿淫売とクリスマス
  太陽神との聖婚秘儀と「ハレム」
  冬至の日の太陽神との聖婚秘儀
  日女としての天照大神
  日女と日神の聖婚秘儀
  遊女と神聖娼
 第六章 『万葉集』の遊行女婦
  大伴旅人・家持と遊行女婦
  遊行女婦左夫流
  「娘子」と記された遊行女婦
  遊行女婦の「遊行」の意味
  「手児」といわれた遊行女婦
  「真間の手児奈」をいう遊行女婦
  遊行女婦の実態
 第七章 遊女と巫女
  遊女の巫女起源を批判する説
  巫女=遊女とみる説
  「梁塵秘抄』の巫女
  客人神としての誘客と神社と遊廓
  歩き巫女と遊女
  「遊女の如くなれる」巫女
  「遊女の如くなれる」比丘尼
  「マレドレ」と「ヰリドレ」
  沖縄の遊女「ズリ」
 第八章 遊女と天皇
  宇多天皇と遊女
  遊女己支と住んだ元良親王
  勅撰歌集に歌が載る遊女たち
  遊女との間に皇子をもうけた後白河法皇
  遊女を母とする公卿たち
  遊女のうたう今様と後白河法皇
  「比類少キ暗主」といわれた後白河法皇
  なぜ後白河法皇は遊女を女房にしたか
  『梁塵秘抄』の遊女と後白河法皇
 第九章 『梁塵秘抄』の遊女・傀儡女
  遊女の好むもの
  「あこほと」といわれた遊女
  『梁塵秘抄』の「すしの人」
  西の京にいた傀儡女たち
  遊女の心境をうたった歌
  遊女の恋の歌
  「遊びせんとや生まれけむ」
 第十章 傀儡女と天皇
  遊女と傀儡子
  傀儡女の条件は唱がうまいこと
  漂泊から定住する傀儡子
  平安時代の傀儡女・遊女
  傀儡女乙前・目井と後白河法皇
  傀儡女と天皇
 第十一章 白拍子天皇
  後鳥羽上皇の女房になった白拍子
  白拍子は「舞女」としての遊女
  白拍子天皇
  後深草上皇白拍子
  白拍子と傾城
  白拍子平清盛
  白拍子・遊女の推参
 第十二章 なぜ遊女は「衣通姫の後身」か
  新嘗の夜の一夜妻としての衣通姫
  真間の手児奈と衣通姫
  一夜妻伝承をもつ女性の出自氏族
  遊部と遊女
  「色好みの遊女」小野小町
  衣通姫小野小町
  「やさしき遊女」和泉式部衣通姫
  遊女小野於通と小野氏
 第十三章 なぜ小松天皇の皇女を遊女の祖としたか
  遊女の祖を小松天皇の皇女とする伝承と「小松」
  松に化した神男・神女と神木の松
  『平家物語』の小松維盛入水伝承と「小松」
  松と若子と入水死
  松王・松浦佐用媛伝承と小松女院
  木地屋と信州高遠の奥山の小松氏
  「小松」の地名と轆轤師と平家伝説
  小松天皇皇女説を伝えた人々
  小野の神と念仏聖
  遊女の祖を小松天皇とする伝承と紀氏・小野氏
 第十四章 内裏の色好みの遊女と天皇
  「内裏の遊女」の「小町」の「小」について
  阿小町の「愛法」
  「愛法(敬愛)」と和泉式部小野小町
  「内裏の小町といふ色好みの遊女」の実像
  後深草亀山上皇と『とはずがたり』の作者
  「内裏の遊女」と上臈
  内裏と遊廓
 第十五章 宮廷の遊女
  遊女と内教坊
  遊女を「準女官的性格」とみる説
  遊女と主殿寮
  男女関係における女性の自立
  「まちぎみ」について
  町・市・松と遊女
  主殿寮の「火炬小子」
  主殿寮・秦氏・小野氏
 あとがき
 注

http://www.hakusuisha.co.jp/detail/imgs/profile.gif 大和 岩雄(おおわ いわお)
1928年長野県生まれ。長野師範学校(現・信州大学教育学部)卒。
主要著書
古事記成立考』(1975年、大和書房)
『日本古代王権試論』(1981年、名著出版
『「日本国」はいつできたか』(1985年、六興出版)
『神社と古代王権祭祀』(1989年、白水社
『人麻呂伝説』(1991年、白水社
『鬼と天皇』(1992年、白水社
秦氏の研究』(1993年、大和書房)
『箸墓は卑弥呼の墓か』(2004年、大和書房)
『新版・古事記成立考』(2009年、大和書房)
日本書紀成立考』(2010年、大和書房)
『神々の考古学』(2011年、大和書房)
『魔女論』(2011年、大和書房)