偽装された戦争(3)


1945年から始まった東西冷戦は、人類史上もっとも広範な地域を巻き込んだ全面戦争であった。この戦争が起った原因について、共産勢力側は、「米国帝国主義者の侵略」であるとしていた。つまり、「米国帝国主義者の侵略」に対して自分達は解放者だというのだ。
しかし実際には彼らこそ侵略者であった。
スターリンは、ポーランドルーマニアなどの東欧諸国に軍事侵略し、それぞれの国に共産党政権を樹立して衛星国化したが、同じ事が朝鮮半島でも起っていた。
ベトナム戦争の勃発については、確かに時代遅れのフランス植民地主義の野望もあったが、共産主義側の世界支配に対する民主勢力の抵抗とも言える。おおまかな区分で述べたとしても、世界中の民主主義国は第二次世界大戦でのヒトラーや日本の軍部との闘争で疲弊し果てていた。こうした状況下で虚を突くように1945年9月ホ・チ・ミン率いるベトミンがベトナム全土を占領し、共産主義政権を樹立したのである。日本が敗北した時、帝国が傀儡政権として樹立したチャン・チョン・キム政権は行政機関を乗っ取られ完全に瓦解し、9月2日には、ホー・チ・ミンハノイベトナム民主共和国の独立を宣言したのだ。

これに対してイギリス軍がサイゴンに上陸し、フランス軍が加わり、1945年9月末にはサイゴンの支配権を奪取した。これが長い泥沼の攻防となったインドシナ戦争の序曲であった。フランスは1949年6月、ベトナム国サイゴンに成立させ、国家承認した。このベトナム国アメリカ、イギリスからも国家承認を受け援助されていた。
それに対してホ・チ・ミン率いるベトナム民主共和国ソビエト連邦中華人民共和国から国家承認し、援助を与えていた。

マラヤ・マレーシアでも1948年から60年まで英国軍+政府VS共産ゲリラの戦闘が起っていた。これも冷戦期の局地戦の一つであり、この戦闘は英国軍+政府の勝利に終わったが、いわいるベトナム戦争は、このマレー闘争の終わりと共に始まったのである。

アジアの共産化という一大テーマの闘いであった。

さて冒頭で述べた「米国帝国主義者の侵略に抵抗する解放闘争」 という共産側の解釈は、今日でもベトナム当局や北朝鮮、それに同調する日韓米などの左翼勢力も使って来たし、今でも生きている。
そしてまた最近、日本の右翼勢力が使っている詭弁論説「あの戦争は欧米の侵略に抵抗する解放戦争であった」 ともよく似ている。詭弁というものは誰が造っても似た構造があるようだ。