今日の日本共産党



一方、日本共産党の創立は1922年。本家より、たったの5年しか後れをとっていない。これは凄い。しかし、激しい迫害や弾圧、そして、党内の仲間割れなどで混乱し、戦後、ようやく安定したものの、その後も、ソ連や中国の共産党とくっついたり離れたりし、70年にはルーマニア独裁政権と懇意になったり、そうかと思うと、91年にソ連共産党が自滅したときには、「大国主義、覇権主義の歴史的巨悪の党の終焉を歓迎する」という声明を出したりと、常に混乱気味だった。

そもそも共産党の究極の目標は、「搾取と階級の廃止」だ。共産党が誕生した時代というのは、壮絶な搾取の横行する階級社会であったので、このアイデアが出てきたのはよくわかる。搾取で苦しむ人のいない、皆が平等で幸せな社会というのは、目標としては素晴らしい。理想的だ。

そこで共産党は、そのために生産手段を社会化しようとしたのだが、現実問題としては、うまくはいかなかった。うまくいかなかったどころか、共産党の支配する国々は、いつの間にか全体主義、独裁主義、あるいは、密告のはびこる恐怖社会へと変化していった。

そして、成立100年を待たずして、劇的に崩壊。今、残っているのは、北朝鮮キューバなど、鼻息は荒いけど経済の破綻してしまった国々と、中国という、共産党の理念から大幅に外れた格差大国しかない。

先日、ある古参の自民党議員の、古参の右腕秘書の話を聞く機会があった。そのとき共産党のことについて尋ねてみたら、氏は、今の日本共産党は、元々の共産党とはまったく関係のない組織だと断言された。ただ、主張していることがぶれないので、それなりに評価しているとのこと(半分皮肉か?)。

そういえば、日本共産党は確かにぶれない。常に反米で、憲法改正反対で、天皇制もできれば解体しようとしている。ただ、私は、共産党公式ホームページの「日本共産党綱領」を見るまで、彼らがいまだに生産手段の社会化を目指しているとは知らなかった!

「日本の社会発展の次の段階では、資本主義を乗り越え、社会主義共産主義の社会への前進をはかる社会主義的変革が、課題となる」、「社会主義的変革の中心は、主要な生産手段の所有・管理・運営を社会の手に移す生産手段の社会化である」と書いてある。ちょっとビックリ。親玉のソ連共産党死すとも、日本共産党死せず! なのだ。
(略)


史的唯物論てまだ捨ててないのかね?

しかし、グローバリズム共産主義とは言えない。ロックフェラーのグローバリズムは有名、その容共姿勢と共に。


世界がグローバル経済化することの究極的意味とは

最近、面白い本を読んだ。いまや世界の共産党勢力は、軒並み風前の灯であるが、その後を継ぐようにして出てきたグローバリズム共産主義が、根は一つという主張だ。

〈 グローバリズムは、物、金、人の国境を越えた自由な移動を実現することによって、世界を自由市場経済で統一しようとする運動です。共産主義とは、世界各国に私有財産を否定する共産主義独裁政権を樹立することによって、世界を共産主義で統一しようとするイデオロギーです。

一見するところ、グローバリズム共産主義は正反対のイデオロギーのように感じられます。グローバリズムの主役は、民間の国際銀行家やこれと結びついたグローバル企業であり、彼らは政府の規制を排して自由に経済活動を行うことを求めています。他方、共産主義は、労働者の前衛を自称する共産党が、国家の上にあって国家や人民を独裁的に支配する体制です。



このように、双方とも国家や政府の規制の及ばない独占的権力を保持している点で、類似性があります。また、この二つのイデオロギー国民国家を超えた世界全体を対象としていること、すなわち国際性を有していることに共通性があります。共産主義者もグローバリストも国際主義者なのです。

加えて、共産主義者もグローバリストも唯物思想の権化です。唯物思想で世界を解釈しているため、市場競争であれ、権力闘争であれ、勝ったものが正義であり、すべてに君臨するという結論に行き着きます。私有財産は大富豪は所有できますが、貧困大衆は自らの自由になる私有財産を事実上所有していないのと同じです。

共産主義体制の下では、特権的政治エリートは国富の形式的な所有権は保持していなくても、無制限的な使用権を持っていますが、非支配階級は富の使用権を持っていません。一握りの特権階級(富豪)と膨大な貧困大衆の二極に分裂した社会は、共産主義社会であれグローバル資本主義社会であれ、本質的に同じ支配構造にあるといえます。

このように、共産主義グローバリズムも、特権エリート階級と貧困大衆という超格差社会を生み出す点で同じものです。この超格差社会化が今世界的規模で進行しています。世界がグローバル経済化するということの究極的意味は、特権的民間資本による世界政府が樹立されるという想像を絶する世界の出現です。 〉

学校でも習った世界史は、まったく間違っていた!?

長い引用だったが、これは馬渕睦夫氏の『国難の正体』のまえがきからだ。戦前から戦後にかけて進行してきた事象を、既成の概念を捨てて見直しており、読むうちに、近代史で抜けていたパズルがスパッ、スパッとはまっていくような爽快な気分になる。今まで読んだ世界史分析の本の中では、抜群に面白い物の一つだ。

ただ、これを読むと、「私たちの教えられていた世界史、つまり、私たちの信じていた世界は、本当は全く違ったものなのかもしれない。そうだとしたら、私は、自分の生きている世界が本当は誰に支配されているかを知らないまま、生き、そして、死んでいくのだ」と、深い戦慄も覚える。

たとえば、なぜ、軍事的に劣勢だった毛沢東共産党軍が、強力な蒋介石軍を破ることができたのか、なぜ、アメリカは、軍事的には朝鮮に圧倒的に優っていたのに、あれほど苦戦し、多くの若者を犠牲にしなければならなかったのか。なぜ、アメリカは、やはり勝てるはずだったベトナム戦争に勝てなかったのか。そして、なぜ、毛沢東スターリンも、自国民を大量に殺さなければならなかったのか? なぜ、ケネディは暗殺されたのか・・・。


それらの答えを、私は知っているはずだった。学校でも習った。しかし、馬渕氏の分析はそれとは違う。読みながら、「まさか、そんな!」と思いつつも、しかし、完全否定するには辻褄が合い過ぎているのが怖い。同書で使われている資料はすべて、誰でも入手可能な公開資料だというから、俗にいう陰謀論とも袂を分かっている。

興味深いのは、共産党にしてもグローバリズムにしても、その主導者は国家ではなく、多国籍企業、あるいは、軍産複合体といわれる、つまり民間グループであるという主張。それが、戦後ずっと、アメリカ政府を、イギリス政府を、そして世界を動かしてきたとしたら空恐ろしいことだが、2011年に起こったウォール街オキュパイ(占拠)は、まさに、この民間グループの支配に抗議して起こった運動であった。

しかも、このウォール街オキュパイ運動でさえ、これを背後から資金援助しているのは誰かなど、不鮮明なことが多い。ただ、多くの人が、多国籍企業の巨大な力に気づき始めたということは、おそらく間違いないだろう。

いずれにしても、私はこの本を読んで、「そうか、戦後の歴史の中で、共産主義というのはアメリカの敵ではなかったのか」と、いやに素直に納得してしまった。普段はそれほど信じやすい方ではないが、ちょっと狐につままれたような気分だ。

一番すごいのは、ただの公開資料からこんな推理小説のようなエキサイティングな本を編んでみせた著者かもしれないが、「共産主義グローバリズムは同根だ」という主張のこの本を共産党員が読むと、どういう意見が出てくるのか、ぜひ、感想を聞いてみたい気がする。