詐欺師・吉田兼倶


吉田兼倶は詐欺師である。

天から光が大元宮に降臨して、そこに神器が出現したという。
「伊勢の、内宮、外宮が、戦乱を嫌い、吉田の地に移られた」ということを匂わせて、調査に当らせた。

更に「伊勢神宮の神々が、二見ガ浦の潮に乗って、大元宮に移られたので、加茂川の水が、塩気を帯びてきたと」朝廷に報告する。
そこで、調べると実際に、水に塩気がある。
だがすぐに加茂川上流に、密かに塩俵を埋めさせていたことが、発覚した

明らかに詐欺師である。

しかし、詐欺師もその詐欺を見破られ、糾弾されてはじめて「詐欺師」になる。兼倶は幕府への裏工作に走る。

教えを権威づけるために、太古神典を勝手に作り、神祇官を支配するため、家系図を作り変えて、吉田の先祖が古代の神祇伯中臣氏であると、偽装し神祇官領長を名乗る

兼倶は秘宝伝授を行い『日本書紀』を後土御門天皇から比叡山の僧侶に至るまで講釈し、『神道大意』などが自身の家に伝えられたと捏造している。
そして日野富子らの寄付によって太元尊神を祭神とする斎場所太元宮を完成させた。(神道辞典』p12)

詐欺師の常として、世渡りは上手かったようだ。
室町幕府に承認させて、神道の家元の地位を確立するとそれ以来、全国の神職は、吉田家の免許により、任命されることになる。

江戸時代末期。平田篤胤たち復古神道家は、この吉田兼倶を詐欺師として糾弾したが、この篤胤自身が詐欺師あるいは山師だろう。それについては次回に書くとしよう。