有害無益の靖国





2014年04月11日

本澤二郎の「日本の風景」(1594)

<ワシントンへの反撃と屈服>
 昨年、ワシントンの要人は千鳥ヶ淵戦没者墓苑に出向いて献花した。これが日本人と国際人の常識であって、侵略戦争を正当化する靖国神社参拝ではない。これに安倍は靖国参拝で反撃した。国家・国粋主義者の本領を発揮して見せた。ワシントンの怒りは頂点に達した。安倍のような人物は、戦後の日本において初めてだったのだから。



 靖国行事を知る日本人は、筆者を含めて少ない。最近になって春と秋の「例大祭」とやらの存在を知ったのだが、神道過激派にとって、これは何よりも重要な儀式らしい。例大祭に参拝することが、神道派の義務なのだという。しかし、この行為は首相としての、つまり公人による参拝は、明白に政教分離に反する憲法違反である。
 法曹人は沈黙している。これもおかしい。右翼に屈している。まともな法曹人のいない司法界を露呈している。春の例大祭は4月21日から23日。安倍を拘束する日程がまた、訪れる。ワシントンはNOと厳しい姿勢である。オバマ訪日直前でもある。安倍は、今回はワシントンの条件を呑んだ。
 TPPも妥協する。その見返りが「戦争の出来る日本」、すなわち集団的自衛権行使をオバマに容認させる安倍の腹だ。これを踏み台に、改憲・軍拡を強行する策略である。財閥の要請を処理出来る、という狙いなのだ。
靖国で左右される日本政治>
 靖国によって日本の外交も経済も左右される。こんな日本でいいのだろうか。
 侵略戦争を正当化する神社・神道によって、日本政治が左右される。隣人の怒りを買うことになる。現にそうなっている。韓国も中国も、そして国際社会も全て首相の戦争神社参拝に抗議している。それでも強行する。狙いは何なのか。
 それは「天皇中心の神の国」という、現代人には想像も出来ない、途方もない神がかりのカルト信仰にある。国粋主義者の思想的原点でもある。こんな信仰にかぶれている人物が、日本の内外政治を担当している。
 安倍個人が何を考えようが自由である。しかし、公人としてそれを行動で示すとなると、重大な政治問題になる。こんな日本をいつまで続けるのか。亀井静香ではないが、日本衰弱死を連想させるだけであろう。
<有害無益の靖国
 政府が靖国にこだわりを見せると、必ず内外に強い波紋・衝撃を与える。日本の右翼マスコミが反撃しても無駄である。時代はグローバル・21世紀である。神道過激派・神社信仰者を喜ばせるが、其の分、世界を・人類を敵に回すことになる。
 百害あって一利なし、である。むろん、神社信仰は自由である。しかし、これは個人の領域に限られる。神社の祭礼も自由。しかし、寄付も参加も個人レベルに限る。組織・団体に強制することなど出来ない相談である。
 公人の靖国参拝・公人としての宗教施設参拝を、日本国憲法など近代法は禁じている。国際常識である。日本人をカルトの世界に追いやる行為を認めるわけにはいかない。
赤紙1枚で殺し・殺された死者を祈念する非宗教施設>
 子供の時代を思い起こすと、戦場に散った者の遺児たちの悲劇のことである。残された母親とその子供の運命である。厳しい社会生活に翻弄されていることが、今は容易に知ることが出来る。既に悲劇人生で亡くなった友人もいる。
 生きるために、人間は何でもしなければならない。それは子を持つ母親にとって最悪の人生である。子供も比例させられて厳しい。高等教育など無縁だ。人生を狂わされるのは、亡くなった父親だけではない。赤紙1枚で戦場に駆り出されて、人を殺し、自らも殺される。侵略戦争大義など無い。
 日本人であれば、周囲にそんな悲劇の日本人がいくらでもいる。それは海外にも、それ以上の苦痛を与えてしまっている。
 「死ねば靖国の英霊」というカルト信仰に何人がとりつかれ、満足するだろうか。父親を殺した宗教施設への参拝を拒否する遺児を知っているが、これが当り前であろう。

 誰もが参拝出来る非宗教施設の建設を官房長官時代の福田康夫が推進したが、これが正しい政府・日本人の対応である。安倍は間違っている。
<安倍はまず侵略戦争を認め・反省と謝罪>
 安倍の為すべきことは、戦争・侵略神社参拝ではなく、侵略戦争それ自身を史実として認める。これが第一である。彼の本心が「自衛戦争」だという事実を、元外務省高官が披歴した雑誌記事で見て驚いてしまったが、これは靖国史観と同じである。
 自民党幹事長を歴任した加藤紘一の「靖国遊就館を海外の要人が知ったら大変なことになる」と言っていたが、安倍はこの遊就館に展示されている皇国思想に染まっている。
 彼の靖国参拝は、正に狂気・カルトなのである。そんな安倍を背後で操る財閥に怒りを覚える。
 侵略戦争を認め、そこから反省と謝罪をすることが、21世紀を生き延びる日本の最低限の価値観としなければならない。
2014年4月11日7時45分記