「山の神」でつながる日本とオリエント




昔、三島敦雄という神社の宮司天孫人種六千年史の研究』という本を書いた。

極めて妄想性が強い著作であり、この著作では「日本の天皇を中心とした天孫民族はシュメール人の末裔」ということになっている。要するに世界最古の民族であり、それゆえに「中東を」あるいは「世界を」統べる権利があるというわけで、軍の教科書として使われたりしたという。
我が国、民族と天皇を支配者としてもちあげる著作なら、何でもいいというわけだ。
結果として皇軍はインド以西に侵攻できなかったから、事なきを得たわけだが、GHQはこの著作を禁書とした。
まあ、適切な処置だったと思う。


当時の「大和民族こそ天孫で、世界を統べるべき民族」というナチスとよく似た妄想はともかくとして、古代オリエントと日本の神話によく似た部分があるのは事実である。このブログでも、オセット神話と記紀の比較をした吉田敦彦の説を掲載したがhttps://blogs.yahoo.co.jp/kurodakango/2788225.html、その他、アドニス(バアル)神話と大国主神話の相似性も吉田敦彦は挙げている。

さて、昨日『オリエント事典』を読んでいると「山の神」について書いてあったので紹介しようと思う。『オリエント事典』は日本オリエント学会の編集で、日本オリエント学会その道の専門家の会員が700人を超える権威ある学会である。戦前の「バビロニア学会」「スメル学会」の後を継ぎ、自身も研究者として『帝王と墓と民衆 : オリエントのあけぼの』、訳書に『古代文化の光』(フィネガン 著)などがある三笠宮崇仁が1954年に設立したのがこの学会である。三笠宮は、日本民族の源はオリエントにあったと考えていたらしい。

さて、『オリエント事典』の「山の神」はこれである。


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なぜ、これに興味をもっているかというと、日本でもまた長らく「山は神々が住まう神聖な地」であり、また「それ自体神として信仰された」からである。浅間(センゲン)信仰の富士山白山信仰の白山(白山ヒメ神社は白山自体を神体として仰いでいる)、オオモノヌシの神体である三輪山諏訪信仰の神体山熊野三山山王や蔵王愛宕信仰の愛宕山・・・など日本には山の神は「山神」以外にもきりがないほど多いのである。

日本とオリエントの間には、何かがあるのだ。