中学校公民教科書採択に関する9月10日の記事

沖縄の有力地方紙「琉球新報」では、
沖縄県八重山地区での中学校公民教科書採択に関する記事に関して、9月10日の社説で以下のように書かれていた。
 

 
 
八重山教科書採択 平和貫く大人の決意示した
 
 国民主権、平和主義、人権尊重を柱とする日本国憲法沖縄戦の教訓などを大切に思う、地域住民の声、民意を反映した妥当な判断が下されたことを評価したい。
 八重山地区の社会科教科書採択問題で石垣、竹富、与那国3市町の教育委員全員による協議が行われ、2012年度から使用する中学公民教科書に東京書籍版を多数決で採択した。
 今回の問題は、教科用図書八重山採択地区協議会の玉津博克会長(石垣市教育長)が現場教員による順位付けを廃止し、無記名投票を導入するなど、従来の教科書選定の手法を一方的に変更したためボタンの掛け違いが始まった。
 玉津会長主導で「新しい歴史教科書をつくる会」系の育鵬社版が選定され、石垣市与那国町両教委が追認したことで政治・社会問題化。同協議では育鵬社版の採択をめぐり激しい議論を展開し、最終的に協議会答申の育鵬社版ではなく、東京書籍版を採択した。
 琉球新報社が石垣、竹富、与那国3市町で実施した世論調査で「新しい歴史教科書をつくる会」系の教科書採択に6割余が反対していた。教育委員の採択は、その民意に沿ったものと言える。
 育鵬社版は現行憲法の役割を積極的には評価せず、戦前の大日本帝国憲法の全文を掲載している。愛国心を強調し、日本の安全保障で米軍と自衛隊の役割を高く評価するなど「改憲志向」の強さが突出していた
 東京書籍版は憲法の平和主義を評価。公共の利益を政府が一方的に判断して個人の人権が制限されてはならないとするなど、育鵬社版とはだいぶ趣を異にする。
 平和憲法に否定的な教科書に、住民や教育関係者が毅(き)然(ぜん)と異議を唱えたことに敬意を表したい。
 
文部科学省教科書検定をクリアした教科書が問題視されたのは、検定制度に欠陥がある証左だ。
 08年度以降使用される高校教科書の検定で、文科省沖縄戦の「集団自決」の記述に検定意見を付し、日本軍による命令・強制・誘導などの表現を削除・修正するよう教科書会社に求め社会問題化した。検定意見の撤回と検定の民主化が進まねば、根本的な解決とは言えない。
 生徒が大人の建設的な「熟議」に学ぶことは意義がある。しかし、不毛な対立には巻き込んでならない。県民全体で教科書選びの民主化へ向け、不断の努力を続けたい
(記事引用ここまで)

 つまり、育鵬社の公民教科書に決まりかけていたが、逆転不採用となったのである。
育鵬社版は現行憲法の役割を積極的には評価せず、戦前の大日本帝国憲法の全文を掲載している。愛国心を強調し、日本の安全保障で米軍と自衛隊の役割を高く評価するなど「改憲志向」の強さが突出していた
という事はどういう事かというと、要するに現代よりも戦前の大日本帝国の方がいい国であったと、育鵬社の公民教科書は主張しており、それを子供に教えようというのである。
育鵬社はふじ・サンケイグループの会社だ。
サンケイ新聞の右翼的主張をそのまま教科書としたのが、この育鵬社の公民教科書である。
これが、不採用となったので、悔しがるサンケイ新聞は、「やり方が不正だ」といちゃもんをつけている。
以下、サンケイ記事。
 

 
 
育鵬社の公民教科書を逆転不採択 石垣、与那国は「無効」と反発
 
 沖縄県石垣市与那国町竹富町からなる「教科用図書八重山採択地区協議会」が選定した育鵬社の公民教科書を、竹富町教委のみが不採択とした問題で、3市町の教育委員全員による協議が8日、石垣市内で開かれた。県教委の指導で採択のやり直しとなり、賛成多数で育鵬社が逆転不採択とされた。適正な手続きを踏んだ協議会の決定が覆されたのは、昭和38年に現行の教科書制度が始まって以来、初めて。民主主義のルールに反する決定といえ、波紋を広げそうだ。
 石垣、与那国両市側は「3市町間の合意を得ておらず無効」と強く反発。与那国町側は育鵬社採択を維持する意向で、さらなる混乱が予想される。
 3市町の教育委員13人全員が集まった八重山教育委員協会の臨時総会で、県教委はこの日の協議を新たな採択の場とするよう求めた。しかし、同協会は任意の親睦団体で、採択に関する法的権限はない。
 このため適正な手続きに基づく協議会の決定通りに育鵬社を採択した石垣市の玉津博克教育長と与那国町の崎原用能教育長が反発。協議が紛糾する中、採決による採択方法が提案され、玉津、崎原両教育長は拒否して退席。協議は約1時間にわたり中断した。
 協議では結局、採決で採択することが賛成多数で決定。採決では議長を除く賛成7人、反対4人で育鵬社が不採択とされた。崎原教育長は棄権した。代わりに、竹富町が採択していた東京書籍が採択された。
(記事引用ここまで)
 

教科書をめぐって、闘いが生じている事がわかるだろう。
この闘いは結局のところ、大日本帝国をどう考えるか?
先の戦争をどう考えるか?
という思想的問題に帰結するのである。
 
そしてこの問題は本ブログのテーマの一つである。