秦郁彦氏の『慰安婦と戦場の性』を読んで・・・

『明るい日本国会議員連盟』の「日本はアジアの解放のために戦った」などとほざく議員達に「先生」とおだてられ「これからもお願いします」と依頼されたという噂の歴史家・秦郁彦氏。
 
90年代前半に精力的に取り組んで、慰安婦について雑誌『正論』などに書いた論文をまとめて本にしたのが、これから取り上げる『慰安婦と戦場の性』という著作である。なかなかの大作で、400ページ超の本作品には、多くの情報が詰まっている。速読で読んでいる私も内容全体を把握するために、2度読み返す必用があった。
 
正しい思考も見られる。例えば、パプア・ニューギニアの軍慰安婦1万6161人は明らかに”ウソ”であって、それはこの著者の言う通りであろう。だが、この考えは秦郁彦氏のオリジナルという訳でもない。
 
しかし、全体を見た時、こうした真実を織り交ぜる事で、読者を誤解へと導くのがこの著作の特徴とも言える。
 
秦氏は、第6章「慰安婦達の身の上話」の冒頭でこう書いている。


 
昔から「女郎の身の上話」という言い伝えがある。純情な若者がすっかり信じ込んでいるのを、年長者がからかい気味に戒める時に引かれるが、最近だと女郎でなく「ホステス」や「ホテトル嬢」におき換えてもよい。
 

 つまり、元慰安婦の話なんかウソなんだから信用するな・・・と言いたい訳だ。
 
 この話はよほど強調したい話らしくて、第9章4「元慰安婦の身の上話で」も同じことを書いている。
 
それはこの著者がもっとも言いたい事の一つなのだろう。
 
以後数回に渡りこの『慰安婦と戦場の性』について書いてみようと思っている。